Take it easy 第四章 ~研究・教育人生:序論~

憧れだった大学教員として歩み始めました。研究者・教育者として、己の在り方を日々模索しながら、向上心をもって過ごそうと思います。

大学教員⇔研究者

教員5年目で、一つの集大成を迎えると思っている今年度は、

とにかく今の私の持てる力(能力と能力以上の人脈)をすべてつぎ込んで

研究をしている。(過去手を抜いているというわけではない)

その分、学生に研究の方向性や課題を与えすぎた教育になっていないか、少し気になっている。

私自身が年齢を経てきて、力をつけていることで学生との差が開き始めたこともあるかとは思うが。。。。

 

学生からしたら、やることや方向性が与えられた方が研究を進めるうえでは楽だと思う。

でも、それは私が目指す教育ではない。

 

論文も同様。私は、できるだけ学生に論文を書いてもらおうと思っている。

論文を書くまで(成果をまとめるまで)が研究だという指導をしている。

まとめるという過程で大きく力をつけるということを知っているからだ。

 

学生から、研究成果をまとめる機会を奪ってしまうのは、私はやりたくない。

でも、私自身が成果(論文)を残さないといけない立場であるというジレンマもある。

 

一口に大学と言っても、世の中にはいろいろな大学がある。

何が正解かなんてわからない。

 

私が大学で仕事をしている理由。それは私を大きく変え、育ててくれた大学という場に感謝しているから。

大学の教員として働く限りには、何が何でも「学生のために」を第一としたいと強く思う。

 

 一つ、書いておかなければいけないのは、

決して学生を非難しているということではないということ。

これは私自身の問題である。

 

書き進めていくうちに、だんだん私の勝手な思い上がりなのかもしれないとも思ったりする。

ただ、すこし悩んでいることなので、包み隠さず備忘録として書き留めようと思う。

ACF(Asia Concrete Federation)

初めてACF(Asia Concrete Federation)の国際会議に参加してきました。

今回の場所は、中国福州市でした。

 

福州市は多くの川が流れ込む、橋が非常に都市でした。

高層マンションの建設が進んでおり、中国の勢いを感じました。

良いか悪いかは人それぞれ意見が違うかと思いますが、

多くの日本人に今の中国の現状(人もインフラも)を見てみらいたいと改めて強く感じました。

 

 

日曜日に、市内観光をしていたところ、

わざと(?)ツタをからめたコンクリート橋を発見しました。

これって、コンクリートにとってどうなの??

 

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今回は、学生の発表が3件(内2件は連名)でした。私は1セッションの座長をしました。

 

同じセッションで座長をした方(モンゴル人助成助成)が、前川先生の指導学生ということで、非常に盛り上がりました。

世界中のいろいろな場所で活躍されているんだなぁと実感。

 

会議中、いくつか基調講演がありました。

正直すごいと思うような講演は少なかったです。

YNUに来ている留学生も同様なことを感じているようでした。

 

私は何も成し遂げていないので、偉そうなことを言える立場ではありませんが、

総じて、日本のコンクリートの研究は諸外国よりも進んでいるように思います。

ただ、それを適切情報発信できていないことが問題のように感じます。

 

私自身、海外の研究者と対等に交流していきたいという思いは強いので、

自身の将来的な課題の一つにしたいと思います。

 

 

オランダ(デルフト)留学時代の仲間(アジア人)も数人いて、プチ同窓会のようでした。

タイ人のルームメートはタイの大手セメント会社で研究者として働いていることが分かりました。

また、当時の指導教員(オランダ人)はRILEM(国際材料構造試験研究機関・専門家連合)の名誉会長として、今回の国際会議によばれていました。

  

来年に国際会議で横浜に来ることが分かったので、その前後にYNUでワークショップを開催することにしました。今からすごく楽しみです。

 

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バンクエットで、YNUの学生たち、私、留学時代の指導教員で写真を撮りました。

10年の時の流れを感じました。(ただ。。。私が一番小さい。。。)

 

10年前、こんな写真が撮れる日が来るとは思っていませんでした。

 

(自分自身や周囲の)制約条件に文句を言うのではなく、周りに助けてもらいながら、向かいたい方向に向かって歩みを止めないことが大切なのだと思います。

その繰り返しで、きっと己の理想像にたどり着けるのだろうと思います。

今までもそうだったように、これからも。

 

定性的な実験

先週一週間、共同研究先の企業に缶詰で、学生と一緒に実験に没頭しました。

元々、日帰りのはずが、なかなか実験がうまくいかず、ホテルに泊まったり、

帰宅しても12時を回るなんてことを繰り返しました。。。

 

内容はコンクリートと地盤の連成実験です。

最近は、こういう類の研究(コンクリートと何かの力学的な連成問題)が好きです。

 

今回はあえて「定性的な実験」に注力しました。

(変形も一応測っていますが、主目的ではありません)

 

我々の研究分野の有名な研究で「後藤クラック」というひび割れがあります。

後藤先生が発見したコンクリート内部に発生するひび割れです。

 

後藤先生は、種々の工夫をしてコンクリート内部に入る(外からは見れない)ひび割れを可視化して、それをスケッチで描きました。

 

この結果は、いろいろな研究者に衝撃を与え、その後の研究の発展に大きく貢献しました。

 

前川先生とのディスカッションの中で、

「若い頃は定性的な研究に何の意味があるのかと思っていた」

というお話がありました。

しかし、「現象を観察し、スケッチするという行為によって客観から主観に変わり、論文になる」ということを教えていただきました。

当然、人が変われば見方が変わる。違う意見が出る。立派な論文です。

目から鱗でした。

 

現象を明らかにするため、周到に準備をし、当日に臨みましたが、

やはり想定通りにはなかなか行きませんでした。

ただ、学生たちは、そういう局面での私の行動を見て、いろいろと感じてくれたことが多かったようです。(後日、そのような感想を言ってくれたのが嬉しかった)

 

後藤先生のような論文が書けるかは分かりませんが、

また一つ、大事なことを学ばせていただきましたので備忘録として書き留めました。

9月の振り返り

気が付けば、あっという間に新学期が始まっていました。

 

9月の締めくくりに、悲しいことが起こってしまいました。

おとといの大型台風の影響で土木構造実験棟前の桜の木が倒れてしまいました。

私の部屋は3Fということで、毎年4月上旬には満開の桜の花を窓から臨むことができました。

入学・卒業の季節とも重なり、いろいろ思い出の多い桜だっただけに非常に残念です。

 

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昨日の様子

 

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2017年4月の夜桜

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2018年4月の桜

 

話は変わりますが、毎年、9月は大学外にいることが多い月です。

今年も、いろいろな経験をさせてもらいました。

 

 

・若手会21の活動報告

 

代表になって1年半。一つの山を乗り越えました。

コンクリートの試験方法に関する映像資料の撮影を、八洋コンサルタントで行ってきました。

プロの撮影業者に協力を依頼し、本番に臨みました。

八洋コンサルタントの高い技術力+過去の予備試験のおかげで非常によい映像が撮れたように思います。

年度終わりか次年度始めに学会から映像資料が配信される予定です。乞うご期待。

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複数の民間・研究機関から20人以上の人が集まっての大撮影会!皆さんの協力に感謝!

 

・初の外国人指導学生の卒業

 

私の中では、一つの大きな挑戦でもあった、初の外国人指導学生が無事に学位(修士号)を取得し、卒業しました。

言語・文化や習慣・ご家族の状態など、これまでの日本人指導学生とはまた違った難しさもありました。

正直100%の達成感とまでは行きませんでしたが、学生も私からいろいろと得るものがあったようなので、その点ではよかったかなと思います。

すでに帰国されましたが、ASCE(アメリカの土木学会)に論文を投稿すべく、メールベースですが研究の仕上げの指導を行っていく予定です。

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・載荷実験

今年は、私の中で集大成の年だと思って行動しています。

持てる力をすべてつぎ込んで、研究に当たっているので、私が指導している日本人学生は相当大変だと思います。

少なくとも、私が彼らと同じ学生だった時より、はるかに大変なことを課しています。

 

その一つとして、夏に(予備)実験をすることができました。

3層の重ね梁の載荷実験を行いました。複数の企業の方にもご協力いただいた実験です。

想定外の結果も起こりましたが、非常に楽しい実験でした。

後期は、実構造物での実験・研究が計画されています。

学生にはさらに頑張ってもらいたいと思います。

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・見学会

日本人学生が主体的に実施してくれた新潟見学会、留学生を中心に引率した黒部ダム立山砂防を中心とした見学会。

どちらも、充実した見学会になりました。(種々の理由で写真は掲載不可)

特に、夏休み期間の見学会は宿泊込みなので、学生一人一人とゆっくり話せるというのが魅力です。

相手がどんな人間か。どんなことを考えているのか。どんなことで悩んでいるのか。。。

若い学生さんとの会話は私自身の刺激にもなります。コミュニケーションが大事です。

 

・その他

習いごとのダンスをしていて、腰痛が再発しました。(前回は博士課程後期の学生時代)

一時、仕事で座る椅子を背もたれのない、膝で座るタイプの椅子に変えて、様態が改善しました。

ただ、おそらく普段の姿勢が良くないかのでしょうね。(ダンスの先生にも姿勢を始動されることが多い)

妻の勧めで整体に通い始めました。身体にも気を付けながら、10月からの新学期を乗り切ろうと思います。

 

10年目のデルフト(オランダ)

無事に全行程を終えて帰国しました。今日から日本での通常業務に戻ります。

(といっても、都内での打ち合わせばかりで、本日は大学には行きませんが。。。)

 

途中で気が付いたのですが、留学から10年目となる節目の年でのオランダ出張となりました。

いろいろと思うところの多い出張となりました。

 

・お世話になった教授の退職記念講演

開催される国際会議中に、所属していた研究室の教授の退職記念講演が行われているということで、ご挨拶もかねて拝聴してきました。

これまでの先生のご功績というのは少なめで、どちらかというとコンクリートが経済にどれだけ貢献してきたかという点に力点が置かれた発表でした。

今後のコンクリート分野の研究の展望についてもお話しされていたのが印象的でした。

私が気に入ったスライドの写真を載せておこうと思います。

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・国際会議での発表

最終日の発表ということで、聴衆は少なめで少し残念でしたが、全力で発表しました。

多くの研究がコンクリートのモデル化・理論化に関する発表が多い中、

私の発表はどちらかというと実務よりの異色の内容でした。

 

せっかくの機会なので、研究発表だけでなく、最近の日本のコンクリート分野の状況(品質確保の取り組みや、示方書の耐久設計の話)も盛り込む内容に変更しました。

その理由として、国際会議中の基調講演で諸外国の研究者の多くが「研究と実務が乖離している」ことに悲観的なことを言っているのを聞いたからです。

諸外国とは少し違う、日本の状況を知ってほしかったからです。

 

聴衆にはインパクトがあったようで、発表後はわざわざ私のところに来てくれて、「Excellent!」といってくださったのはうれしかったです。

 

・国際会議での座長

国内の会議での英語セッションの座長の経験はありましたが、海外の国際会議での座長は初めての経験でした。

とはいえ、特に変わったことはなく、無難にこなせたかなと思います。

機会を与えていただたことに感謝です。

 

・RILEM(国際材料構造試験研究機関・専門家連合)の委員会への出席(代理)

前川先生の代打として、MgOベースの膨張材料の委員会に出席しました。

会議の席には論文で名前をよく見る諸外国の研究者・実務者が多くいました。

留学時代に研究室でルームメートだった、中国人の友人や

留学時のオランダ人の指導教員も、今回は各国を代表する形で

同じ会合に出席しているというのが不思議であり、印象的でした。

日本から唯一の会議への参加者として、日本の現状や私の印象を伝えようと、

必死に討議に参加し、意見を述べてくることができました。

 

・その他

海外にいるからこそ、ゆっくり日本人同士で話ができるというのも、

海外出張の一つの魅力だと最近は思います。

石田先生(東大)、今本先生(理科大)、武田先生(明石高専)との4人での飲み会は楽しかった。

 

海外にくると日本の現状、日本人というのを強烈に意識します。

私もそう思ったし、他の日本人の方々も同じようなことを口にされていましたが、

やはり日本のコンクリート分野の研究レベルは総じて高いと思いました。

(諸外国の人たちが勉強不足なのか、日本人が英語で情報を発信していないからかは不明)

博士課程進学時、日本で進学するかオランダで進学するか迷いましたが、

改めて、あの時の選択は間違っていなかったと思うことができました。

 

逆に、海外(特に中国人)の勢いは脅威だと10年前よりさらに強く感じました。

争う必要はないかと思いますが、現状を知っておくべきかと思います。

海外に日本人が少ないのは問題だと思いました。

(同時期に国内外で会議が重なっているのは知っていますが。。。)

春日さん(三井住友)が、日本の代表として活躍されているのとはレベルが違いますが、日本人がなめられてはいけないと、私もこの短期間で存在感を示そうと強烈に感じました。

いつか、日本の小松といわれるような存在になりたいと思いました。

 

 

などなど、10年前と比べて、いろいろと変化を感じることができた出張になりました。

自身のバロメーターとして、また自分自身を省みることができるという意味で

このデルフト(オランダ)という場所は私にとって特別な場所です。

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(新教会からの臨むデルフトの街並み)

 

追記:10年目にして、ようやく妻をオランダに連れていくことができました。一つ約束を果たせて良かった。

夏休みの過ごし方

今年のお盆休みは、静かな職場で溜まった仕事の処理に勤しみました。

学務関係の仕事、委員会資料の作成、報告書の作成、投稿論文の作成、論文査読、発表スライドの作成・・・。

いわゆる「夏休みの宿題」が溜まっていました。

某教授(おそらく小学校のお子さんがいる?)のSNS

「夏休みの宿題多い…自由研究だけさせてほしい」という投稿がありました。

気持が分からないではありませんが、私の場合はそこまで嫌な仕事というわけではありません。

小さなことかもしれませんが、どんな形であれば、自分が必要とされている、貢献できていると感じているからだと思います。

 

「自由研究」関係でいえば、昨日・本日は、共同研究先との打ち合わせです。

自由研究は難しいですが、楽しいです。

 

 

先週は研究室の夏合宿がありました。私自身12回目(多い!)の夏合宿となりました。

修士課程の頃までは、同年代の友人研究室内にいたので「楽しい旅行」という感覚が強かったように思います。

博士課程の頃や教員になりたてのころは、責任感が芽生え始め、

「自分がやるべきこと」というのを考え、模索していたように感じます。

(このころが一番、夏合宿に参加することがつらかったかもしれません)

ここ数年は、大事なところは教員としての立場を意識して行動しつつも、

「自分自身が楽しもう」というマインドになってきました。

結局そのほうが、学生たちも責任感をもって事に当たれるし、

私自身も肩の力が抜けて勉強になるので、全員にとってプラスの要素が多いように感じます。

 

今回の合宿では、非常に多くの研究室外の方のサポートを受けました。

特に、私の身近な先輩である林先生、世界的に活躍されている春日さんの発言や行動にはあこがれや尊敬、感銘を受けました。

上記の過程ように、焦らず一歩ずつ着実に成長していきたいと思います。

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最後に。

このお盆休みの期間に、もうすぐ帰国する留学生の家(寮の部屋)に招待していただき、昼食をごちそうになりました。

私は学生時代に留学生寮にRA(レジデントアシスタント)として住んでいた経験がありました。

当時は、このような機会は多かったのですが、久々のことで非常に懐かしい感覚でした。

教員として留学生(学生)を招待することはあるかなと思っていたのですが、

まさか教員になっても、このように寮に呼んでいただけるとは思っていなかったので、非常に嬉しいことでした。

(教員として見られていない!?)

今度は教員という立場で、彼ら留学生の日本での生活に満足してもらうお手伝いができたのであれば、この上ない喜びです。

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前期終了(教育の振り返り)

本日から2日間。大学ではオープンキャンパスが開催されています。

私は初日の研究室紹介を担当しています。

簡単な実験を行ったり、数値シミュレーションを見せたりしながら、

高校生たちと対話しながらコンクリートの魅力を伝えました。

私自身が楽しかったし、それが伝わったのか、

学生や親御さんから、分かりやすかった、楽しかったと言ってもらえたのが嬉しかったです。(真に受けるタイプです)

 

 

今週は、留学生(修士学生)の最終審査会がありました。

私にとって初めての留学生の指導学生となりました。

言語の違いもそうですが、国民性の違いや、家族がいる学生という、

これまでとは違った指導の難しさがありました。

最後、もう少しディスカッションできればなという後悔もありますが、

次第点までは到達できたのかなと思っています。

これから、彼とは論文をまとめ上げる過程で、更なるディスカッションをしていきたいと思っています。

 

 

留学生といえば、今年はYCCSの講義(使用言語:英語)も1コマ任されました。

日本人も混じっていたので、

留学生と日本人の双方の意見交換ができるような講義が面白いかなと思って、

そのような講義構成にしました。

日本人学生には、私も昔は英語での講義はさっぱりわかっていなかったこと、

でも、だんだんとわかるようになっていったことを体験談として伝えました。

今の私にできること、私だからできることを精一杯90分つたえ続けました。

これも今学期、楽しい新しい経験でした。

 

その他にも、学部1年生の講義、3年生の学生実験(こちらは学生TAが主体)、などがありました。

 

振り返ってみて、改めて私は教育という仕事が好きだし、魅力を感じています。

 

後期は卒論生の活動も本格化していきます。

残り半年間も悔いなく過ごしたいと思います。

 

追記:今秋から妻と同じ職場で(事務員として)働くことになりました。

   夫婦ともども、土木に面倒を見てもらって、感謝しかありません。